国際基督教大学ICUを在学生が紹介します!
タイヨウです。去年立教大学にいて、今年2年からICUに編入しました。ICUは一般入試など一部の入試から編入できます。またの機会にそれについても詳しく書きます。
この記事ではICU(国際基督教大学)について紹介します。
ICUは三鷹にある私立大学です。戦後にプロテスタント系のキリスト教徒や協会からの寄付で設立されました。マッカーサーの、日本の教育をキリスト教精神に基づいた教育に変えようという計画が元になって建てられたとのことです。
少しマイナーな大学ですが、2023年の「THE 日本大学ランキング」(https://japanuniversityrankings.jp/rankings/)では初めて10位に入りました。旧帝国大学、一橋、東工大、早慶だけでも11になってしまうのでかなり良いところまで行っていると思います。ランキングで学生からの評価の項目は特に高く、実際に自分もとても良い学校だと思っています。
ICUはもともとアメリカのリベラルアーツカレッジ(例えばアマーストカレッジとかが有名)をモデルにしていて、ドイツの大学をモデルにしている日本の大学と色々違うところがあります。
ICUのキャンパス
↑ 寮生が1週間コスプレをして授業を受けるイベント最終日のパフォーマンス
キャンパスは三鷹市にある一つのキャンパスのみです。JR中央線の武蔵境駅、東小金井駅が最寄りですがどこの駅からもそんなに近くないので電車通学の学生は三鷹駅からバスに乗ることが多いです。キャンパスは自然が多く広いのが特徴です。写真のように本館の前は芝生になっていてとてもいい場所です。キャンパスは広いですが、1学年700人で全学年でも3000人あまりと学生数が少ないです。授業はほぼ本館のみなので授業間の移動は少ないですね。
寮、実家、一人暮らしが大体おなじくらいの割合という体感です。近くに住んでいる人が多いので気軽に誰かと夕食に行けます。夜コンビニやスーパーに行くと結構な確率で誰かと遭遇します。
ICUで学べることは?
3年次に専攻を決める
ICUはリベラルアーツ大学です。メジャー(専攻)は31個あって、シングルメジャー、ダブルメジャー、メジャーマイナー(専攻副専攻)という選び方があり、ダブルメジャーの場合には卒論はどちらかの専攻を選びます。3年次にで専攻を決めます。2年までは色々な分野に触れて興味があるものを探します。高校までは学問に触れていないのに、大学入学時に4年間学ぶものを決めるのは難しいので、専攻を選ぶタイミングを遅らせることができてとてもいいシステムだと思います。逆に悩みが増えて面倒でもありますが。
専攻できる科目は美術・文化財研究、音楽、文学、哲学、経済学、経営学、歴史学、法学、公共政策、政治、国際関係学、社会学、人類学、メディア・コミュニケーション・文化、生物学、物理学、化学、数学、情報科学、言語教育、教育学、言語学、心理学、アメリカ研究、アジア研究、開発研究、環境研究、ジェンダー・セクシュアリティ研究、日本研究、平和研究と幅広く用意されています。
黄色い部分は学際メジャーと言って、色んな分野を横断する専攻です。例えば開発研究なら経済や国際関係、社会学などを使います。環境研究なら生物学、化学、法、経済などを使う必要があるかもしれません。ダブルメジャーをする学生は、学際メジャーを1つと学際以外の専門科目を取ることが多いようです。
大学入学後に文転、理転できる!?
ICUに文系入試で入学しても理系メジャーを目指すこともできます(もちろん逆もOK)。メジャーにするためには要件があり、基礎科目の授業を2つほど、平均GPA2.5以上で単位を取得するという基準があります。理系基礎科目の単位を要件通りに取得できれば文系から理系メジャーにすることができます。大学入学後に文理を変更できる仕組みがある大学は日本にはほぼ無いので、大学入学後の選択肢を幅広く持つことができる貴重な大学だと思います。
ICUは英語や国際系に興味がある学生が多いイメージがあるかもしれませんが実はそうでもないです。メディア・コミュニケーション・文化メジャーの翻訳家になるコースの人以外は英語自体の勉強をメインでする人はいません。英語で授業を取る人もいますが、英語力や英語の好きさは人それぞれなので最低限しか英語をやらなくなる人もいます(ほとんど日本語だけでも卒業出来ます)。国際系も最初は人気がありますが最終的にメジャーを選ぶ時になるとバラけていきます。
ICUの授業の仕組み
授業時間と回数はICU独自のシステム
学期は3学期制で授業は週3回か週2回で70分です。日本の大学はほとんどの大学が2学期制で授業は週1回90-100分です。それに比べICUの授業時間は70分なので集中が続きやすいです。授業の頻度が高いのでその講座の内容を覚えやすいです。立教大学は2学期制で授業は週1回、100分だったのでだいぶ楽に感じます。
ELA 英語の授業
1年次は時間割の⅔以上はELAという英語の授業が自動で入ります。このELAの単位を取るのが大変でアルバイトをする人が少ないです。自分のクラスは1学期は18人中3人くらいの学生しかアルバイトをやっていませんでした。立教大学ではほとんどの学生がアルバイトをしていたことに比べるとかなり少ないです。
ELAはレベル別にストリーム1から4まででクラス分けされます。ストリーム1はネイティブかネイティブと同じレベルの人のため、英語の授業はアカデミックライティングのみで少ないです。ストリーム2は海外の大学でもついていけるような英語力がある人です。これもあまり英語の授業は多くないです。ストリーム3からが一気に英語の量が増えて時間割の⅔以上になってしまいます。
ストリーム3は最もクラスの数が多くレベルの幅が広いです。海外経験があり海外の大学でもやっていけるようなレベルの人からずっと日本の教育を受けてきた人までいます。特にスピーキング、リスニングは差がとてもあります。でもやっていけないことはないです。ストリーム4はこれまで海外の経験がほぼない学生がほとんどです。授業内容は英語の難しい文をたくさん読む練習、スピーキング、アカデミックなライティングなどです。ELAは2年1学期まで続きます。
ICUは教育熱心な大学
ICUは教育熱心で、学生の教育にたくさんお金を使っています。教師と生徒の比が1:20と、私立大学にしては教師の割合が多いです。英語の授業では毎回宿題を出されるのでそれを提出すると添削されて、それを直して再提出するのですが、再提出の前に対面で個別にアドバイスを受ける時間があったりと学生に対しての教育は丁寧だと思います。
またキャンパスの土地も広く維持費がかかるようで、授業料だけだと毎年赤字を出しているとのことです。個人的には高い授業料を広告費など事業の拡大にお金を使うような学校よりも、しっかり教育にお金をかけてくれる学校に行きたいのでこれはICUのいいところなのではないかと思います。
赤字はどうやって補填しているのかというと、最初に寄付された財産を元手に資産運用で利益を出して補填しています。どんなことでも企業のように金を稼いで大きくなることが正義だと考えているような人はこれをよく思わないようです。
ICUの文化や雰囲気
自分はICUの雰囲気にとても魅力を感じています。ICUではいわゆる普通の日本の教育を全て受けてきた人よりも、海外に一定期間行っていた人やインターナショナルスクールやIBなどのどれかを経験している人が多いので、おそらくその文化に染まっています。具体的には、自由(人目を気にしないという意味で)、勉強熱心、フレンドリー、リベラルな雰囲気の学生が多いです。例えば学校内ではマスクをつけている人の方が圧倒的に少ないです。
学校の外に出てもマスクをしない人がほとんどです。みんな基本的に勉強熱心で、たくさん遊ぶ人でも成績がどうでもいいというわけではなく、遊びも大学も両立させている印象です。先輩にもバイトや遊びで単位が危ういという話は聞いたことがありません。
ぱっと見、見た目がいかつい学生も、自分の興味のある分野について語らせるとかなり面白いことを語ってくれたりもします。やさしくて人と仲良くしたいという人が多いです。
大学でありがちな、とりあえず最初に仲良しグループを作ったからその中でやればいいやというのではなく、いろんな方向で繋がりを求めます。英語のクラスでイベントがあったり、学年の人数が少ないというのもありシャイな人でもやっていきやすい大学なのではないかと思います。
学校自体もリベラルですが生徒もリベラルな人が多いです。特にジェンダー、難民移民、環境系の運動が盛んです。デモに行く人もちらほら。ずっと日本の学校に行っていた人もこの文化に少しは染まって卒業していくのではないかと思います。
学校側の進歩的な取組み
ICUでは本館のトイレはほとんどがオールジェンダートイレです。また、白杖をついた人などを街中よりよく見かけます。障がい者の受け入れ体制を大学がしっかり整えているそうです。学食をテイクアウトする場合の容器はビニールのフィルムがついていて、はがせばまた使えるようになっています。環境に配慮した取り組みです。
ICUはオールジェンダートイレや障がい者の受け入れ態勢を整えるなど横の多様性は大事にするが経済的な縦の多様性には全く気を配らないとよく言われています。たとえば、学費は年150万円でとても高いです。また、生理用品をトイレに配置するということを生徒が提案して学校側が拒否したということがあったそうです。こういうところを見ると、ICUの特色は縦の多様性を無くして特定の特徴を持つ人を入れることでできているということなんだと思います。もちろんこれに居心地の良さを感じる生徒にとってはとてもいいことですが、一概にICUを褒められない気がします。
ICUを卒業したあとの進路
就職7割、大学院2割、その他1割です。卒業生の平均収入はかなり高いというデータが出ているので将来はあまり心配ないと思います。外資、NGO、国連、新聞社が多いそうです。
ICUの入試
一般、総合型(AO)、帰国、留学生、学校推薦、キリスト教推薦、附属高校からの推薦があります。英語ができる人が多い順に留学、帰国> AO 、付属>学校推薦、一般>キリスト教推薦(体感と聞いた話なのであまり信用しないでください)。
一般的に推薦があるせいで大学の質が落ちると推薦入試の評判は悪いですが、少なくともICUに関しては全くそんなことはないです。AO、帰国、内部進学など推薦系で入ってくる人は高校ですでに文章、プレゼン、英語、ディスカッションなどの訓練を積んでいるので、座学以外の力が求められる大学での勉強がとても得意な印象です。
この記事を読む人がICUを受験するとしたら一般入試かAO入試だと思いますが、AO入試についてはあまり詳しくないのでそれについては今回は触れません。要件を見るとそもそも高校生が普通に生活していて出願できるものではない気がします。
ICUの一般入試の仕組みや難易度
一般A方式は英語、総合、人文or自然科学。B方式は外部英語検定、総合、面接です。
一般B方式はTOEFL80点、IELTS6.5点などが出願要件な上に定員が少なく倍率も高いです。TOEFL80点、IELTS6.5点も普通の高校生(帰国子女、長く留学、IBなど特殊な高校でない)が取れる点数ではないのでAが現実的でしょう。
一般A方式は合計得点が6割強で合格ラインだと言われています。配点は英語90点、総合問題80点、人文か自然科学80点です。意外なことに他の私立大学より英語の配点が低いです。英語はTOEFLリーディングとTOEFLリスニングに似ていてとても難しいですが、英語で点数を取れなくても他でカバーできれば勝算があります。自分は毎回過去問で英語4割、総合7-8割(答えが公表されないので得点は予想です。総合問題は読解メインの出題のためその点数に近くなる可能性が高い。簡単な数学や理科分野も数問出題されます)人文8-9割でした。
総合問題、人文は読解といっても大学で読むような硬い内容の本を理解できるかというのが大事で、現代文で点数が取れるかとは別です。現代文は読解力プラステクニック、ルールで、硬い本が読めるかどうかは読解力プラスその分野の知識だと思います。これまで読書(人文、社会学、理系)経験がどれほどあったかどうかで点が左右されると思います。そのため大学受験を始めてからのタイミングで対策のしようがあるのは英語だけです。しかも英語は実際に配点が高いのと、中央値を元にした得点調整でさらに比重が重くなるはずなので英語を対策するのがいいと思います。
今のところ自分はICUにとても満足しています。ICUの友人たちも自分の学校が好きな人がとても多いです。勉強したい、人から刺激をもらいたいというひとには特にいいと思います。ぜひICUも検討してみてください。
執筆:タイヨウ 立教大学社会学部→国際基督教大学、イクスタコーチ卒業生
ICUに編入する際に詳しく調べた試験方法や対策方法について、以下の記事で詳しくご紹介しています!